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| セーラームーンSCD「ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS」における海王みちるポエムの解釈[作成日:2005年5月18日. 最終修正日:2005年5月21日.] [目次] 1.序論 2.本論 『ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS』各収録曲の解釈・解説 2-1.prologue〜みちる、秘めた想い 2−2.運命は美しく(歌:勝生真沙子) 2−3.ポエム [daydreamerによる海王みちるポエムの判読] 3.結論 4.謝辞 5.引用文献 1.序論 アニメ版セーラームーン関連で海王みちる本人(声:勝生真沙子)が登場する主要CD/カセットは、以下の通り。
この中でも特に難解なのは、『美少女戦士セーラームーンS 〜ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS〜(以下、『ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS』と略す)』における“ポエム”である。このポエムは抽象度が非常に高いため、一度聴いただけでは歌詞の意味を完全に理解することが難しい。またこのポエムが収録されているCDには、みちるが朗読したポエムの全文が文字掲載されておらず、解説の類も一切付けられていない。そのようなCD構成は他のみちる関連CDでも他のアニメのCDでもみられることであり、別段驚くことではない。もともと「セーラームーン」というアニメ番組は夜7:00-7:30のゴールデンタイム(多くの子供がまだ起きている時間)に放映されており、アニメ本編のサイドストーリーとして企画された一連のCD/カセットコレクションも子供が理解できる範囲で留められていた感が伺える(例:「美少女戦士セーラームーン うさぎたちが声優に挑戦? 守れ夢のアフレコ・スタジオ(※)」)。すなわち朗読全文や解説がなくとも聞くだけで文意がとれるレベルにCD内容が抑えられてきたと考えられる。またパロディCD等に収録されている科白をCD付録として全文掲載したり、誰かに曲の解説を書いてもらうととなれば、それなりに費用がかかり、その分CDの販売価格も割高にしなければならなくなる。そのためアニメCD制作者は、CD制作費の節約(あるいは不足)という経済的な事情も考慮してキャラクターの科白や曲解説を掲載していないと考えられる。 仮にそのような事情があったとしても、『ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS』における海王みちるの“ポエム”は子供が理解できるレベルを越えてしまっている。大人にとっても、感性を研ぎ澄ましてみちるの声に耳を傾けなれば、文意がとり辛い内容となっている。つまりこのポエムを他のキャラソング等と同等な扱いをしてしまっては、海王みちるの真意を汲み取ることは困難になってしまうということ。ここではそのような事情を踏まえて、『ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS』における海王みちるポエムの解釈・解説を試みたい。 これまで難解さゆえに敬遠されてきたこのポエムをいま解釈することによって、海王みちるについて新たな発見があるかも知れない。なおポエム等の解釈にあたっては、『ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS』以外のCDに収録されている海王みちるポエムやモノローグも参考にした。またCDからの歌詞や科白の引用にあたって、著作権の関係上全文を掲載することは控え、要所のみの部分引用とした。そのためこれ以降の本文をお読みになるときは、CD『ウラヌス・ネプチューン・ちびムーンPLUS』を聞きながら読んでいくことをおすすめする。 ※声優オーディションの第一次審査テープに、亜美は円周率を1万桁吹き込み、まことは武術練習時の気合いの声を吹き込む。また皆の日記内容が聞けるシリーズでは、料理が得意なまことは究極の奥義“目玉焼き”だけは何故か上手く作れないことや、亜美がわりと頻繁にラブレターをもらい、お断りの返事を書いていることが明かされる。それらは全て平易な話し言葉で収録されており、小〜中学生が試聴しても十分理解できる内容である。 [このページの先頭へ] 2.本論 『ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS』各収録曲の解釈・解説 2−1.prologue 〜 みちる、秘めた想い ナレーション:海王みちる(声:勝生真沙子) 脚本・構成:榎戸洋司. BGM作曲:つのごうじ この朗読の中で示されているみちるから見たはるか像を整理すると、以下ののようになる。
・「プロメテウスが火を盗んで以来、流れにただ身を任せないことが人間性の証であることを、あたしは知っている」 →みちるがこの表現を使って言いたいことは、自分の人生は自分で考えて決める(選ぶ)ということ。 →ギリシャ神話におけるプロメテウス関連の話からの引用だと思われる。大神ゼウスに頼まれて、プロメテウスは粘土で人間という生き物を作り、人間が生きていくために必要な様々なものを与えた。そのときのゼウスの指令内容はこうだった。 「神々に似た生き物を粘土で作ってくれ。出来上がった粘土人形への息は、私が吹き込もう。息を吹き込まれた人形には、生きていくために必要なものは何でも与えてやってよい。ただし火だけを与えてはならない。火は神々の宝だから。」 プロメテウスは、出来上がった人形(人間)に道具や言葉など生きていくために必要なものを与え、下界に下ろして生活させてみた。しかし人間は他の動物と違って毛皮で覆われた体も鋭い牙や爪を持っていなかったので、彼らはいつもほら穴の中に隠れて震えながら暮らす日常を送るようになった。 あるとき天界から下界を見下ろしていたプロメテウス神は、そのことに気づいて非常に憐れんだ。そこで人間が生きるためにもっと適当な能力や技術を授けてあげようと思い立ち、太陽の火を少し盗んで人間に与えた。火を与えられた人間は、他の動物が火を怖がるのを利用して自分の周囲に火を絶やさぬようにして身を守ったり、火を使って料理をしたり道具を作ったりすることを覚えた。以前のようにただ洞穴に隠れて泣き暮らす生活ではなく、外に出て果敢に人生を切り開いていく生活に移行していったのだった。つまり火を使いこなすことで、人間は知性を身につけるようになった。 火を与えられた人間はたしかに以前より生存能力が上がったものの、神々の宝であるそれを使いこなせる彼らの存在は、天界にとっては脅威となりつつあった。そのためゼウスは激怒し、プロメテウスを厳罰に処した。 ・「運命なんて、あたしには無意味だもん。そんなの気にしないタイプだもん。」 →この表現とは対照的に、シングルCD『美少女戦士セーラームーン 海王みちる』では「運命に感謝したい。あなたとめぐり会えたから」とみちるは語っている。あるときは“運命なんて無意味”と言い、またあるときは“運命に感謝したい”と言うみちるの発言は、一見矛盾しているようにも思える。この件に関しては、みちるファンである彩歌さんから以下のようなご意見をいただいた。 「セーラー戦士として生まれた運命については無意味だ(※)と思っているけれど、はるかと出会えた運命には感謝しているのでしょう。」 ※…前世からの宿縁や運命に従って戦士になったのではないということ。戦士の道を歩むか歩まないかについては、自分の意志で決めて選択した。 ・「あーあ…。会わなければ良かった」 →字義通りではないことに注意。本当ははるかと会えてとても嬉しいし、会わなければ良かったなんて少しも思ってもいない。はるかと出会えてとても嬉しいけど、そのために恋の悩みが尽きなくなった愛苦しい状況を、あえて反対の表現で言ってみたまでのこと。なおこの表現においては、はるかを守るためにはヴァイオリニストになる夢を諦めなければいないことまでは含意していない。 ・「あなたが退屈な人になったら、今からでも別れるつもりよ。」 →この発言からわかることは、はるかとみちるはやはり恋人同士だったということ。その事実をアニメ制作サイドが公に認めた発言ともとれる。アニメ92話「第92話 素敵な美少年?天王はるかの秘密」において、うさぎ&美奈子からはるかと関係を訊かれたとき、恋人同士ではないと言っていたが、あれは嘘だったということ。 →アニメ92話、亀田モータース近くでのやりとり 美奈子「質問!! あなたははるかさんの恋人なんですか?」 うさぎ「イエスかノーでお答え下さい。」 みちる「ノーよ。」 [このページの先頭へ] 2−2.運命は美しく(歌:勝生真沙子) (作詞/白峰美津子 作曲/つのごうじ 編曲/京田誠一) ・懐かしい笑顔 →天王はるか(ウラヌス)のこと。その直後の“ポエム”で出てくる「懐かしい、暖かいブルー」も同様にはるかのことを指している。 ・深い闇=使命を遂行するうえで重ねる傷害事件や殺人(未遂)。 ・冷たい嵐=海が時化っている状態。海が荒れている状態。アニメ/原作では「海が荒れているわ」という表現は、地球の平和を乱す不穏な気配を戦士としての直感が感じ取っている状態を指している。 ・遠い夢 →世界の終末を予言する夢。 ・「遠い夢がいつかホントになっても」 →たとえ世界が沈黙に包まれても。たとえセーラー戦士としての任務を果たせなくても ・☆★Repeat部分「この運命は美しく 私の涙を輝かせるから どんな悲しみが押し寄せても もう二度と傷つかない あなたがいれば あなたがいれば あなたがいれば」から読み取れること →はるかを守るために戦士の道を選んだことを後悔していない、はるかがいればどんな悲哀にだって耐えていけるということ。詩において、繰り返し表現は強調表現の一種として使われることがある。 [このページの先頭へ] 2−3.ポエム ナレーション:海王みちる(声:勝生真沙子) 作・構成:白峰美津子. 使用曲:運命は美しく(作曲・編曲:つのごうじ) このポエムを一般的なを詩の分類にあてはめると、以下のようになる。
以下で詩の中の言葉の意味を一つ一つ考えていく。 ・「そこは悲しいくらい青くて 悲しいくらい輝きに満ちた場所でした」 →“そこ”とはどこか。海王みちるが深海の戦士セーラーネプチューンであることや、海王みちるシングルCDに収録されているもう一つのポエム等を参考にすると、“そこ=海”であることがわかる。もう一つのポエムにおいては、「全ての生きとし生けるものを育む深い海」と直接的に表現されているが、この詩ではあえて暗喩してある。なぜか。それは詠み手にとって、このポエムにおいては海に対して何か後ろめたい気持ちがあるためではないだろうか。海→みちるがセーラー戦士として目覚めた場所(?)。ポエムの最後で再度このフレーズを繰り返していることからも、みちるにとってそこが思い入れの深い場所であることが読み取れる。 ・「天使のような羽根を残して、鳩が空に飛び立った」 →字義通りとらえれば、海から空に鳩が飛び立ったということ。その情景は、何か別のことに気をとられていて、ようやく我に返った瞬間のことも表しているのではないだろうか。たとえばドラマや映画において、鳩が空に飛び立つシーンがスローモーションのように流れることがある。そのシーンは、大抵良くないことの暗喩として挿入されている(→“誰かが亡くなった瞬間”“事故が起きた瞬間”など)。またこの表現は、詩の最後部での表現「光のモザイクを抱きながら 緩やかなカーブを描きながら たった一つの海に注いでいくのです」にも繋がっている。海から空に飛び立った鳩が、再び海(海辺)に降り立つという描写。そして詩人は、海での記憶を再び心に強く呼び起こすのである。 ・「自分の手の冷たさにはっとしました」 →戦士として任務を遂行しているうちに、自分の手についた誰かの血のこと。殺人や傷害の暗喩。 ・「自分の想いの深さにはっとしました」 →天王はるかに対する想いの深さにはっとしたということ。 ・そのこと=夢見ること→ヴァイオリニストになることを夢見ること ・あの瞬間 →ヴァイオリン演奏時のクライマックス、あるいは演奏終了時の達成感。聴衆による喝采、拍手など。 ・「指先から生まれる音符よ、あなたの心へまっすぐ飛び込んでいきなさい 指先からこぼれる悲しみよ、あなたの心へまっすぐ飛び込んでいきなさい」 →自分が奏でる音がこれまでとは変化したことに対して戸惑い、悲しんでいることを表している。夢以外に何も守るものなく生きてきた今までの自分と、はるかを好きだと気づいて彼女を守りたいと思う自分との戦い。戦士の道を選ぶことで自分の将来が台無しになることや、使命を遂行するうえで犠牲者が必ず出ることは悲観すべきこと。また、はるかを守るために犯し続けるであろう手段を選ばぬ戦い方に、心が無反応になりつつあることへの戸惑いも含まれている。擬人法。対句法。 ・「遠くで嵐の音がしました。稲光が近づいていました」 →少しずつ迫りくる世界の沈黙について暗示している。暗喩。 ・光のモザイク →偏向板への光のあたり具合によって、絵の中の模様が動いているように見えるもの。それまで型通りで退屈だった日常が、はるかという光を得たことによって、みちるの心の中のキャンパスで色を持って動き出したということ。もともと深海の底は真っ暗で光の届かない場所であり、その真っ暗で時が止まったような状態がはるかと出会う前のみちるの心理状態に近いものだったのだろう。暗喩。 ・子供の頃に見た小さな夢 →みちるにとっての“運命の人”が出てくる夢(→“prologue〜みちる、秘めた想い”より)。単に“夢”ではなく“小さな夢”と表現されているのは、ヴァイオリニストになる夢を“大きな夢”、現実的な夢と考えた場合の対比のためだろう。またそのような言葉の使い分けは、みちるが現実主義者であることも示唆している。 以上ののキーワード解釈を総合すると、このポエムはアニメ106話回想シーン以前のみちるの心模様を詠ったものであることがわかる。幼い頃に運命の人と出会う夢を見て、世界に沈黙が迫っている兆候を次第に目にするようになり、ついにはヴァイオリニストである夢を諦めて天王はるかと共に生きていくことを決めた過程が詠い込まれている。 [このページの先頭へ] そのことを踏まえてこのポエムを最初から噛み砕いていくと、以下のようになる。
[このページの先頭へ] 3.結論 これまでの解釈を総合すると、このCDにおける海王みちるの主張は以下の4点に集約される。
[このページの先頭へ] 4.謝辞 本文を書くにあたり、当サイトの常連である彩歌さんから海王みちるシングルCDに収録されている「プロローグ」「戦士の想い」「ポエム」の歌詞全文をメールで提供していただき、考察における疑問点に関して貴重なご意見も賜りました。また学友のM.Hさんにも大変お世話になりました。これらの方々に深謝の意を表します。 [このページの先頭へ] 5.引用文献 [書籍] ・「現代詩と解釈と鑑賞事典」(旺文社) 小海永治 1979. ・「近代詩現代詩必携」(学燈社) 原子朗 1988 ・「近代詩物語」(有斐閣ブックス) 分銅惇作・吉田キ生編 1978 [CD] ・サウンド・ドラマ・コレクション「美少女戦士セーラームーンS 〜男子校潜入!ついに巡り合った憧れの先輩」 ・サウンド・ドラマ・コレクション「「美少女戦士セーラームーン うさぎたちが声優に挑戦? 守れ夢のアフレコ・スタジオ」 ・「美少女戦士セーラームーンS 〜ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS〜」 ・「美少女戦士セーラームーン セーラースターズ 海王みちる」[SINGLE]…歌詞のみ。 ・「美少女戦士セーラームーン メモリアルソングボックス」6枚組CDボックス…歌詞のみ。 |
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