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[検索エンジンで飛んで来た方へ]このコーナーはアニメ「セーラームーンS」のファンページに過ぎません。セーラームーンS以外の分野の参考文献としては全く役立ちません。閲覧するだけ、時間の無駄です。
セーラームーンSCD「ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS」における海王みちるポエムの解釈[作成日:2005年5月18日. 最終修正日:2005年5月21日.]

[目次]
1.序論
2.本論
『ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS』各収録曲の解釈・解説
2-1.prologue〜みちる、秘めた想い
2−2.運命は美しく(歌:勝生真沙子)
2−3.ポエム
[daydreamerによる海王みちるポエムの判読]
3.結論
4.謝辞
5.引用文献

1.序論
 アニメ版セーラームーン関連で海王みちる本人(声:勝生真沙子)が登場する主要CD/カセットは、以下の通り。

商品名 概要
サウンド・ドラマ・コレクション「美少女戦士セーラームーンS」男子校潜入!ついに巡り合った憧れの先輩 アニメ本編のパロディドラマ集。セーラーチームが無人島に漂流する話や、男子校に潜入する話、はるかさんが魚屋さんでバイトしたりゲイバー“ジョイチャイト(※)”でもバイトさせられそうになる話が収録されている。ギャグ満載。
[はるか&みちるによる“素敵なレディ”“優雅な女性”の条件]
・お手洗いに行かない
・オナラをしない
・汗をかかない
・ムダ毛がない
・オナラをしない
…これはそのまま“80年代アイドル”の条件にもあてはまっている。
※「セーラームーン(無印)」に登場した四天王ゾイサイトのもじりか。ゾイサイトはオネエ系のキャラクターであり、同じ四天王の一人であるクンツァイトとの悲恋もあった。ゾイサイトもクンツァイトも男性。
「美少女戦士セーラームーンS 〜ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS〜」 シリアスな作りの独白集。“ポエム”“みちる、秘めた想い”“運命は美しく”が収録されている。
「美少女戦士セーラームーン セーラースターズ 海王みちる」[SINGLE] 1.プロローグ/2.ポエム/3.戦士の想い(勝生真沙子)/4.同(オリジナル・カラオケ)を収録している。ここで収録されているポエムは、先の『ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS』とはまた別物。
「美少女戦士セーラームーンメモリアルソングボックス」 6枚組CDボックス。ディスク4:『美少女戦士セーラームーン セーラースターズ・ソングコレクション』に“戦士の想い(勝生真沙子) 、ディスク5:『美少女戦士セーラームーン セーラースターズ・プロローグ&ポエムコレクション』に“セーラーネプチューン(海王みちる)~プロローグ”“ポエム”が収録されている。

 この中でも特に難解なのは、『美少女戦士セーラームーンS 〜ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS〜(以下、『ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS』と略す)』における“ポエム”である。このポエムは抽象度が非常に高いため、一度聴いただけでは歌詞の意味を完全に理解することが難しい。またこのポエムが収録されているCDには、みちるが朗読したポエムの全文が文字掲載されておらず、解説の類も一切付けられていない。そのようなCD構成は他のみちる関連CDでも他のアニメのCDでもみられることであり、別段驚くことではない。もともと「セーラームーン」というアニメ番組は夜7:00-7:30のゴールデンタイム(多くの子供がまだ起きている時間)に放映されており、アニメ本編のサイドストーリーとして企画された一連のCD/カセットコレクションも子供が理解できる範囲で留められていた感が伺える(例:「美少女戦士セーラームーン  うさぎたちが声優に挑戦? 守れ夢のアフレコ・スタジオ(※)」)。すなわち朗読全文や解説がなくとも聞くだけで文意がとれるレベルにCD内容が抑えられてきたと考えられる。またパロディCD等に収録されている科白をCD付録として全文掲載したり、誰かに曲の解説を書いてもらうととなれば、それなりに費用がかかり、その分CDの販売価格も割高にしなければならなくなる。そのためアニメCD制作者は、CD制作費の節約(あるいは不足)という経済的な事情も考慮してキャラクターの科白や曲解説を掲載していないと考えられる。
 仮にそのような事情があったとしても、『ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS』における海王みちるの“ポエム”は子供が理解できるレベルを越えてしまっている。大人にとっても、感性を研ぎ澄ましてみちるの声に耳を傾けなれば、文意がとり辛い内容となっている。つまりこのポエムを他のキャラソング等と同等な扱いをしてしまっては、海王みちるの真意を汲み取ることは困難になってしまうということ。ここではそのような事情を踏まえて、『ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS』における海王みちるポエムの解釈・解説を試みたい。
 これまで難解さゆえに敬遠されてきたこのポエムをいま解釈することによって、海王みちるについて新たな発見があるかも知れない。なおポエム等の解釈にあたっては、『ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS』以外のCDに収録されている海王みちるポエムやモノローグも参考にした。またCDからの歌詞や科白の引用にあたって、著作権の関係上全文を掲載することは控え、要所のみの部分引用とした。そのためこれ以降の本文をお読みになるときは、CD『ウラヌス・ネプチューン・ちびムーンPLUS』を聞きながら読んでいくことをおすすめする。

※声優オーディションの第一次審査テープに、亜美は円周率を1万桁吹き込み、まことは武術練習時の気合いの声を吹き込む。また皆の日記内容が聞けるシリーズでは、料理が得意なまことは究極の奥義“目玉焼き”だけは何故か上手く作れないことや、亜美がわりと頻繁にラブレターをもらい、お断りの返事を書いていることが明かされる。それらは全て平易な話し言葉で収録されており、小〜中学生が試聴しても十分理解できる内容である。

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2.本論
『ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS』各収録曲の解釈・解説

2−1.prologue 〜 みちる、秘めた想い
ナレーション:海王みちる(声:勝生真沙子)
脚本・構成:榎戸洋司.  BGM作曲:つのごうじ

 この朗読の中で示されているみちるから見たはるか像を整理すると、以下ののようになる。

[みちるから見たはるか像]
1.一緒にいて退屈させない。非凡な人。
2.集団の中での孤独を、常に感じている人。
3.誰にも甘えない人。
4.自分の気持ちに素直な人。
5.ずっと一緒にいたいと思わせる人。
6.戦士としてのワークパートナー以上の魅力を最初から備えていた人。
7.とにかくカッコイイ。
8.死ぬまで1-7のような特徴を持ち続ける人。


 その中でも、みちるがはるかを好きになった決め手は、はるかが「とにかくカッコイイ」こと。“とにかく”という副詞は、“他の事は差し置いて”という意味の強調表現である。
(→「ただ…。もう、とにかくカッコイイんだから」

・「プロメテウスが火を盗んで以来、流れにただ身を任せないことが人間性の証であることを、あたしは知っている」
→みちるがこの表現を使って言いたいことは、自分の人生は自分で考えて決める(選ぶ)ということ。
→ギリシャ神話におけるプロメテウス関連の話からの引用だと思われる。大神ゼウスに頼まれて、プロメテウスは粘土で人間という生き物を作り、人間が生きていくために必要な様々なものを与えた。そのときのゼウスの指令内容はこうだった。
「神々に似た生き物を粘土で作ってくれ。出来上がった粘土人形への息は、私が吹き込もう。息を吹き込まれた人形には、生きていくために必要なものは何でも与えてやってよい。ただし火だけを与えてはならない。火は神々の宝だから。」
 プロメテウスは、出来上がった人形(人間)に道具や言葉など生きていくために必要なものを与え、下界に下ろして生活させてみた。しかし人間は他の動物と違って毛皮で覆われた体も鋭い牙や爪を持っていなかったので、彼らはいつもほら穴の中に隠れて震えながら暮らす日常を送るようになった。
 あるとき天界から下界を見下ろしていたプロメテウス神は、そのことに気づいて非常に憐れんだ。そこで人間が生きるためにもっと適当な能力や技術を授けてあげようと思い立ち、太陽の火を少し盗んで人間に与えた。火を与えられた人間は、他の動物が火を怖がるのを利用して自分の周囲に火を絶やさぬようにして身を守ったり、火を使って料理をしたり道具を作ったりすることを覚えた。以前のようにただ洞穴に隠れて泣き暮らす生活ではなく、外に出て果敢に人生を切り開いていく生活に移行していったのだった。つまり火を使いこなすことで、人間は知性を身につけるようになった。
 火を与えられた人間はたしかに以前より生存能力が上がったものの、神々の宝であるそれを使いこなせる彼らの存在は、天界にとっては脅威となりつつあった。そのためゼウスは激怒し、プロメテウスを厳罰に処した。

「運命なんて、あたしには無意味だもん。そんなの気にしないタイプだもん。」
→この表現とは対照的に、シングルCD『美少女戦士セーラームーン 海王みちる』では「運命に感謝したい。あなたとめぐり会えたから」とみちるは語っている。あるときは“運命なんて無意味”と言い、またあるときは“運命に感謝したい”と言うみちるの発言は、一見矛盾しているようにも思える。この件に関しては、みちるファンである彩歌さんから以下のようなご意見をいただいた。
「セーラー戦士として生まれた運命については無意味だ(※)と思っているけれど、はるかと出会えた運命には感謝しているのでしょう。」
※…前世からの宿縁や運命に従って戦士になったのではないということ。戦士の道を歩むか歩まないかについては、自分の意志で決めて選択した。

「あーあ…。会わなければ良かった」
→字義通りではないことに注意。本当ははるかと会えてとても嬉しいし、会わなければ良かったなんて少しも思ってもいない。はるかと出会えてとても嬉しいけど、そのために恋の悩みが尽きなくなった愛苦しい状況を、あえて反対の表現で言ってみたまでのこと。なおこの表現においては、はるかを守るためにはヴァイオリニストになる夢を諦めなければいないことまでは含意していない。

「あなたが退屈な人になったら、今からでも別れるつもりよ。」
→この発言からわかることは、はるかとみちるはやはり恋人同士だったということ。その事実をアニメ制作サイドが公に認めた発言ともとれる。アニメ92話「第92話 素敵な美少年?天王はるかの秘密」において、うさぎ&美奈子からはるかと関係を訊かれたとき、恋人同士ではないと言っていたが、あれは嘘だったということ。
→アニメ92話、亀田モータース近くでのやりとり
美奈子「質問!! あなたははるかさんの恋人なんですか?」
うさぎ「イエスかノーでお答え下さい。」
みちる「ノーよ。」

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2−2.運命は美しく(歌:勝生真沙子) 
(作詞/白峰美津子 作曲/つのごうじ 編曲/京田誠一)

懐かしい笑顔
→天王はるか(ウラヌス)のこと。その直後の“ポエム”で出てくる「懐かしい、暖かいブルー」も同様にはるかのことを指している。
深い闇=使命を遂行するうえで重ねる傷害事件や殺人(未遂)。
冷たい嵐=海が時化っている状態。海が荒れている状態。アニメ/原作では「海が荒れているわ」という表現は、地球の平和を乱す不穏な気配を戦士としての直感が感じ取っている状態を指している。
遠い夢
→世界の終末を予言する夢。
「遠い夢がいつかホントになっても」
→たとえ世界が沈黙に包まれても。たとえセーラー戦士としての任務を果たせなくても
☆★Repeat部分「この運命は美しく 私の涙を輝かせるから どんな悲しみが押し寄せても もう二度と傷つかない あなたがいれば あなたがいれば あなたがいれば」から読み取れること
→はるかを守るために戦士の道を選んだことを後悔していない、はるかがいればどんな悲哀にだって耐えていけるということ。詩において、繰り返し表現は強調表現の一種として使われることがある。

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2−3.ポエム
ナレーション:海王みちる(声:勝生真沙子)
作・構成:白峰美津子.
使用曲:運命は美しく(作曲・編曲:つのごうじ)


 このポエムを一般的なを詩の分類にあてはめると、以下のようになる。
口語詩:口語(話し言葉を基準とした文体の言葉)で書かれた詩。現在の主流。
散文詩:行分けをせずに書き出された詩。ボードレールの作品に多く見られる形式。
(or もし行分けしている場合は、自由詩:一行の行数にとらわれないで、形式的に自由に書かれた詩。ただしこの海王みちるポエムにおいては、制作者サイドから詩の内容が紙媒体で提供されていないため、実際にはどれだけの行数でどのように語句が配列されていたのかは不明。また明治時代に自然主義(※)の発展として起こった口語自由詩運動(現代語によって現代人の生活感情を飾りなく詠え、というもの)の風潮等と比較すると、このポエムからは人間としての生活臭やリアリティがあまり感じられない。むしろ浪漫的色彩が強く、比喩や擬人法を用いて自己の感傷や決意がロマンティックな言葉を用いて処理されている。)
叙情詩:個人的な心情を主として歌った詩
浪漫主義(ロマンチシズム):異郷や過去にユートピアを求め、個性・空想・形式の自由を強調する思潮。芸術の自由を主張し、感情を中心に据えた個別的な人間に意義を見いだし、自我の解放を目的とした思潮。代表的な詩人は、島崎藤村、与謝野晶子。(⇔古典主義)

※…自然主義が目指すものは以下の二点である。
1.日常卑近の題材を歌うこと
2.近代人たる自己の主観を偽らずに率直に流露すること
[引用:「近代詩物語」(1978) 有斐閣ブックス p.21 ]

 以下で詩の中の言葉の意味を一つ一つ考えていく。
「そこは悲しいくらい青くて 悲しいくらい輝きに満ちた場所でした」
→“そこ”とはどこか。海王みちるが深海の戦士セーラーネプチューンであることや、海王みちるシングルCDに収録されているもう一つのポエム等を参考にすると、“そこ=海”であることがわかる。もう一つのポエムにおいては、「全ての生きとし生けるものを育む深い海」と直接的に表現されているが、この詩ではあえて暗喩してある。なぜか。それは詠み手にとって、このポエムにおいては海に対して何か後ろめたい気持ちがあるためではないだろうか。海→みちるがセーラー戦士として目覚めた場所(?)。ポエムの最後で再度このフレーズを繰り返していることからも、みちるにとってそこが思い入れの深い場所であることが読み取れる。
「天使のような羽根を残して、鳩が空に飛び立った」
→字義通りとらえれば、海から空に鳩が飛び立ったということ。その情景は、何か別のことに気をとられていて、ようやく我に返った瞬間のことも表しているのではないだろうか。たとえばドラマや映画において、鳩が空に飛び立つシーンがスローモーションのように流れることがある。そのシーンは、大抵良くないことの暗喩として挿入されている(→“誰かが亡くなった瞬間”“事故が起きた瞬間”など)。またこの表現は、詩の最後部での表現「光のモザイクを抱きながら 緩やかなカーブを描きながら たった一つの海に注いでいくのです」にも繋がっている。海から空に飛び立った鳩が、再び海(海辺)に降り立つという描写。そして詩人は、海での記憶を再び心に強く呼び起こすのである。
「自分の手の冷たさにはっとしました」
→戦士として任務を遂行しているうちに、自分の手についた誰かの血のこと。殺人や傷害の暗喩。
「自分の想いの深さにはっとしました」
→天王はるかに対する想いの深さにはっとしたということ。
そのこと夢見ること→ヴァイオリニストになることを夢見ること
あの瞬間
→ヴァイオリン演奏時のクライマックス、あるいは演奏終了時の達成感。聴衆による喝采、拍手など。
「指先から生まれる音符よ、あなたの心へまっすぐ飛び込んでいきなさい
  指先からこぼれる悲しみよ、あなたの心へまっすぐ飛び込んでいきなさい」

→自分が奏でる音がこれまでとは変化したことに対して戸惑い、悲しんでいることを表している。夢以外に何も守るものなく生きてきた今までの自分と、はるかを好きだと気づいて彼女を守りたいと思う自分との戦い。戦士の道を選ぶことで自分の将来が台無しになることや、使命を遂行するうえで犠牲者が必ず出ることは悲観すべきこと。また、はるかを守るために犯し続けるであろう手段を選ばぬ戦い方に、心が無反応になりつつあることへの戸惑いも含まれている。擬人法。対句法。
・「遠くで嵐の音がしました。稲光が近づいていました」
→少しずつ迫りくる世界の沈黙について暗示している。暗喩。
光のモザイク
偏向板への光のあたり具合によって、絵の中の模様が動いているように見えるもの。それまで型通りで退屈だった日常が、はるかという光を得たことによって、みちるの心の中のキャンパスで色を持って動き出したということ。もともと深海の底は真っ暗で光の届かない場所であり、その真っ暗で時が止まったような状態がはるかと出会う前のみちるの心理状態に近いものだったのだろう。暗喩。
子供の頃に見た小さな夢
→みちるにとっての“運命の人”が出てくる夢(→“prologue〜みちる、秘めた想い”より)。単に“夢”ではなく“小さな夢”と表現されているのは、ヴァイオリニストになる夢を“大きな夢”、現実的な夢と考えた場合の対比のためだろう。またそのような言葉の使い分けは、みちるが現実主義者であることも示唆している。

 以上ののキーワード解釈を総合すると、このポエムはアニメ106話回想シーン以前のみちるの心模様を詠ったものであることがわかる。幼い頃に運命の人と出会う夢を見て、世界に沈黙が迫っている兆候を次第に目にするようになり、ついにはヴァイオリニストである夢を諦めて天王はるかと共に生きていくことを決めた過程が詠い込まれている。
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 そのことを踏まえてこのポエムを最初から噛み砕いていくと、以下のようになる。
[daydreamerによる海王みちるポエムの判読]
注:キーワードの関係が不明瞭な部分については、想像で補っている部分があることを予めご了承ください。
 私が戦士の道を選ぶことを決めたその場所は、悲しいくらい青くて、悲しいくらい輝きに満ちた場所でした。そこは、全ての生きとし生けるものを育む深い海。あるときそこで怪物に遭遇し、死が目前に迫りました。そのとき、ネプチューンの変身スティックが出現しました。私はそのスティックが何に使われるものなのか、本能的に知っていました。そしてその近くには、まだ覚醒してはいないけれど、私にとって運命の人になる人物も偶然居合わせていました。無論彼女は、私がセーラー戦士であることも、私がそこにいたことも知らなかったけれど。彼女に危険が迫ったとき、私は初めて変身スティックを手に取りました。そして無我夢中で戦い、私にとって大切なものを守り抜こうとしました。結局そのときはその人を守ることができたけれど、気づくと私の手は血で濡れていました。血で濡れた手は、あんなにも冷たい。心を凍らせるほどの悲しみを、そのとき初めて抱きました。
 その事件が起こるまで、自分の将来についてよく見通せていました。ヴァイオリニストになる夢を叶えるために厳しい練習を日々重ねて、その夢を叶えるために全力を注いでいました。コンクールでは常に一番を目指し、その通りの結果をおさめてきました。ヴァイオリンの魅力は何かと聞かれれば、弾き終わったときに聴衆の方々から戴く喝采や、自分自身の達成感が得られることです。それを得られる瞬間が、たまらなく好きでした。そんな風にヴァイオリニストになるために邁進する日々は、ヴァイオリンに夢中というよりも、ただ何かに追われるような日々にも思えました。自分が本当はどこに向かって流れているのか、時々わからなくなることがあったし、何より、孤独でした。周囲の大人達からどんなによくされても、クラスメイト達からどんなに賞賛や好奇の目を向けられても、結局私の寂しさや心の内を真に理解してくれる人はいなかったのです。だから私は、そんな周囲の状況や自分の人生自体に、どこか冷めた気持ちを抱いていました。
 ただ、ヴァイオリニストになる夢とは別に、子供の頃からずっと見続けていた夢がありました。その夢の中で私は、自分に運命の人がいることや、地球崩壊のヴィジョンを繰り返し見てきました。そのことは私を喜ばせ、同時に不安にもさせていました。最初は夢事と思っていたけれど、あるときを境に夜毎にその夢を見る頻度が多くなっていき、目が覚めてもその夢のことを考えるようになっていきました。もうすぐ、地球外部からの侵略者によって世界が沈黙に支配されるかも知れない。そのことを阻止できるのは、自分とその運命の人だけ。まだ幼かった私に、夢の中の亡霊(今思えばあれはネプチューンだった)は繰り返しそのことを告げていました。悲しげな表情をして。そうして自分が生まれながらの戦士であることを知った私は、これまでの平穏な生活が壊されるかも知れないことが怖くなってきました。…もし戦士の道を選んでしまったら、普通の生活にはもう戻れない。それに世界を沈黙から救うなんて大それたこと…。いや、馬鹿馬鹿しいことなんて、やっていられないと思ったから。
 それでも私にとって運命の人と巡りあい、世界を沈黙から救うために、戦士としての道を選ぼうという気持ちが強くなっていく自分に戸惑うようになっていました。父母に何不自由なく育てられ、ヴァイオリニストになる夢に向かって着実にステップアップしていたそれまでの生活を投げ打って、危険で行き先の見えない世界に足を踏み入れようとしている自分に。戸惑って、何とか逃れようと、もがき苦しみました。けれども逃れようとすればするほど、かえって強く、明け方の夢でネプチューンの亡霊に諭されるのでした。
“世界を沈黙から救えるのは、あなたとあの人しかいない。あの人がいるこの世界を、どうか守って”と。
 心の中での動揺は次第に大きくなっていき、また世界に沈黙が迫っている兆候を目にする回数もだんだん多くなっていきました。ヴァイオリンを弾いていても、上の空になっていることが多くなっていました。作曲のためにピアノの前に座っても、鍵盤から出てくる音がどこか狂って聞こえていた。調律が必要なのはピアノではなく、自分の耳のほうなのだとわかっていました。悩みに悩んだ末、私は戦士として生きることを選びました。あの人がいるこの世界を守りたい。それが戦士の道を選んだ最終的な理由でした。端から見るとただ運命に翻弄されているようにみえるだろうけれど、この道を選んだのは自分自身。だから私は、後悔はしていません。あの人と同じ運命(さだめ)を持つことに、誇りを感じたから。ヴァイオリニストになる夢は諦めてしまったけれど、未来の自分も、この選択を今と同じように後悔していないことを願って止みません。
 あの人と共に在ることによって、私の四季は色づき、それまでの退屈な日常から解放されました。辛く苦しいことも多いけれど、一度として昨日と同じような日はない。同時に、はるかと一緒にいることで安らぎも得るようになりました。肉親から得る安らぎとは違う、もっと情熱的で官能に満ちた安らぎ。はるかと出会えて、本当に良かった。あのとき、あの海で変身スティックを手にして、あの人を守ることが出来て良かった。おかげで私もあの人も、もう一人ぼっちではなくなりました。そしてそれらの想いも想い出も、全てたった一つの海に…戦士として生きていくことを決めたあの海辺での出来事に帰結していくのです。その海は悲しいくらい青くて、悲しいくらい輝きに満ちた場所でした。
 そして今私は、あの人のそばに。懐かしいあたたかいブルーのそばに…かつてシルバーミレニアム時代に禁忌を共にしたウラヌスの生まれ変わりのそばにいます。もちろんあの人が前世でも契りを交わしたウラヌスだと知る前に、私はあの人を見つけて、惹かれていたのだけれど。自分が何を守りたくて戦士の道を選んだのか。その想いを、穏やかで清らかな深海の底に沈め隠して、生き続けていきたい。そうやってこれからもずっと、子供の頃に夢見ていた“運命の人”のそばに居続けたいと思います。

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3.結論
 これまでの解釈を総合すると、このCDにおける海王みちるの主張は以下の4点に集約される。
・セーラー戦士として生きる道を選んだことを後悔していない。
・セーラー戦士として生きることを決めたのは、自分自身である。運命によって決められたのではない。
・はるかのそばにずっといたい。
・はるかがいるこの世界を守りたい。
 上記の4点を、言葉や表現形態(ポエム/歌/モノローグ)を変えながら、海王みちるは本CDで繰り返し強調している。その主張や姿勢は別CDに収録されている「戦士の想い」や「プロローグ」でも貫かれており、海王みちるというアニメキャラクターを理解するうえでのエッセンスであると結論する。

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4.謝辞
 本文を書くにあたり、当サイトの常連である彩歌さんから海王みちるシングルCDに収録されている「プロローグ」「戦士の想い」「ポエム」の歌詞全文をメールで提供していただき、考察における疑問点に関して貴重なご意見も賜りました。また学友のM.Hさんにも大変お世話になりました。これらの方々に深謝の意を表します。

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5.引用文献
[書籍]
・「現代詩と解釈と鑑賞事典」(旺文社) 小海永治 1979.
・「近代詩現代詩必携」(学燈社) 原子朗 1988
・「近代詩物語」(有斐閣ブックス) 分銅惇作・吉田キ生編 1978
[CD]
・サウンド・ドラマ・コレクション「美少女戦士セーラームーンS 〜男子校潜入!ついに巡り合った憧れの先輩」
・サウンド・ドラマ・コレクション「「美少女戦士セーラームーン  うさぎたちが声優に挑戦? 守れ夢のアフレコ・スタジオ」
・「美少女戦士セーラームーンS 〜ウラヌス・ネプチューン・ちびムーン・PLUS〜」
・「美少女戦士セーラームーン セーラースターズ 海王みちる」[SINGLE]…歌詞のみ。
・「美少女戦士セーラームーン メモリアルソングボックス」6枚組CDボックス…歌詞のみ。
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